「冷凍食品の日」って知っていますか?
2023/10/29
冷凍食品誕生の歴史
「食欲の秋」ー 自然界から与えられた美味しい食材が溢れている季節ですね。
私たちは、日常的になんの疑いもなく、
作りすぎた料理を冷凍することにより保存したり、
すぐには食べきれない食材や野菜の鮮度をそこなわずに保存しておくために
調理して、あるいは生のまま冷凍したりします。
そして、スーパーやコンビニのショーケースには、たくさんの冷凍食品が並んでいます。
今では誰もが当たり前のように行なっている「食品を冷凍する」という発想と技術、
この食品の冷凍技術の開発が、現代の食生活の豊かさを支えていることは、
疑う余地のない事実です。
ー食品をその品質を保ったまま長期保管するために冷凍するー
すなわち「冷凍食品」の歴史は、1876年にフランス人のテリエが、
牛肉をアルゼンチンからフランスへ運搬するのに、冷凍して運んだのが始まりとされています。
日本では、1909(明治42)年、魚を保存するために、冷凍したのが始まりとされていますが、
日本における冷凍食品事業の始まりは、1920年(大正9年)北海道森町にて葛原猪平が、
現在のニチレイの前身となる森冷凍工場(後に葛原冷蔵)を建設したことに端を発します。
調理冷凍食品の始まりは、1948年、東京・日本橋の白木屋デパートで、
現在のニチレイフーズの前身である日本冷蔵が、
「ホームミート」「ホームシチュー」を試売したことによります。
ちなみに、ニチレイフーズは、ニチレイグループにおいて「加工食品事業」を担い、
冷凍食品を含む加工食品の開発から製造・販売を行っている会社ですが、
その売上は90%以上を冷凍食品事業が占めています。
冷凍食品の需要がそれだけ多いということなのでしょう。
また、1964年の東京五輪では選手村の食事に冷凍食品が活用されたことで話題になりました。
このことが、食品冷凍技術の進歩に一役買ったと言われています。
「冷凍食品の日」の由来
そのような歴史を経て、今や私たちの生活にすっかり溶け込み、
なくてはならない存在となった冷凍食品ですが、1986年一般社団法人日本冷凍食品協会が、
10月18日を『冷凍食品の日』と制定しました。
一般社団法人日本冷凍食品協会は、冷凍食品の正しい知識の普及を目指す目的で設立された団体です。
ではなぜ、10月18日なのでしょうか?
「レイトー」の音にちなんで「10」月にしたのだろうというなのは、なんとなく察しはつきますが、
「18」日の由来は何なのでしょう?
これは、冷凍食品の定義を知れば、納得がいきます。
『冷凍食品』とは、基本的に次の4つの条件を満たしたものを指します。
・前処理している
新鮮な原料を選び、きれいに洗浄したうえで、たとえば魚であれば
頭・内臓・骨・ひれなどの食べられない部分を取り除いている。
・急速凍結している
食品の組織が壊れて品質が変わってしまわないように、非常に低い温度で急速凍結している
・適切に包装している
利用者の手元に届くまでに、汚れたり、形くずれしたりすることを防ぐため、包装されている。
・品温(食品の温度)-18℃以下で保管している
生産・貯蔵・輸送・配送・販売の各段階を通じて、一貫して-18℃以下に保つよう管理している。
これでもうお分かりですね?
冷凍食品は、マイナス18℃以下での保存、流通が要件として定められているのです。
ただ、実は、これは業界が定めた「冷凍食品自主的取扱基準」という自主基準であり、
食品衛生法では、有害微生物が増殖できないマイナス15℃以下を基準として定めています。
しかしこれは、「おいしさを長期間担保する」という観点での基準ではありません。
一方、一般社団法人日本冷凍食品協会では、
マイナス18℃以下で保存すれば、約1年間ほぼ元の品質を維持できる上に、
細菌の繁殖を抑え、食品の酸化や酵素反応などの変化を抑制できることから、
消費の際の品質保持の観点からマイナス18℃以下と設定しました。
これは、食品の国際規格であるコーデックスにおいて定められている
マイナス18℃以下という保管温度とも合致します。
つまり、マイナス18℃以下での保存という業界が定めた基準は、
十分に品質の安全が担保され、かつ味のおいしさを守るための温度なのです。
そのようなことから、「10月18日」が冷凍食品の日と定められたのです。
冷凍食品の技術はもちろんですが、最適な保存基準も研究されてきたからこそ、
調理現場や食卓に欠かせない「おいしい冷凍食品」が生まれ、
私たちの食生活を豊かにしてくれているのですね。
ちなみに、家庭でホームフリージングされた食品は、
厳密には「冷凍食品」とは呼べないのですが、できるだけマイナス18℃以下で保存するよう
心掛けたいものです。
新鮮な食材を調理してすぐ食べ切るのが望ましいことはいうまでもありませんが、
上手に冷凍して、貴重な食材を無駄にせず、何度も味わえるようにするのも、
食生活に豊かさを添える一つの知恵と言えるのではないでしょうか。