珍しい秋の味覚・・・ウチワエビ

　この写真、何だかわかりますか？
ウチワエビ、という海の生き物で、
セミエビ科（Scyllaridae）ウチワエビ属（Ibacinae）に属するエビの一種です。

　千葉県から九州、日本海西部、沖縄、東シナ海、フィリピン諸島、
さらにはオーストラリア沿岸の水深100メートルほどの浅場に生息していますが、
泳ぐことができず、海底を歩いて移動するそうです。

　甲羅が団扇（うちわ）の形に似ていることからウチワエビと名付けられましたが、
学名は bacuc ciliatus (von.Siebold,1824) といい、
これはドイツ人の医師であり博物学者でもある
シーボルト博士（1796〜1866年）の命名によるものです。
1824〜1828年まで長崎市出島に滞在した博士が、
自らオランダに持ち帰り、新種記載したそうです。

 

　旬は秋で、甲殻類の中でももっとも身が詰まっており、
伊勢海老のように濃厚で美味しいとのことですが、
都会では珍しく、高価であり、
スーパーや普通の鮮魚店で見かけることはほとんどありません。

　そのような貴重なものを、今回、五島列島に住んでいる方が、
実家へ送ってくださいました。感謝！！
長崎県平戸市で水揚げされたもののようです。

　実はこのウチワエビなるもの、以前 TVで観たことはあったのですが、
「変な生き物〜」と思っただけで、美味しそうだとも食べてみたいとも感じませんでした。
エビ自体は大好きなはずなのに・・・

　なので、今回、送られてきた発泡スチロールを開けた時には、一瞬、絶句・・・

　しかし、折角のご厚意でもあるわけですし、是非ともこの機会に、
「生命力が強い」と言われるこの生き物のエネルギーをいただいてみたいと思ったものの、
まだ動いていたこともあり、一体どう格闘したらよいものかと、
しばし思案することになりました。
（実は、いわゆる”活け造り” は、見るのも触るのも食べるのも苦手で・・）

　同梱されていたパンフレットには、
蒸す・焼く・味噌汁に入れる  etc... 幾つかの調理法が書かれていたのですが、
まだ生きている甲羅に包丁を入れることははばかられ、、
単体でボイルしてそれだけ食べるというのも何だか勇気がなく、
結局、鍋料理にして、野菜と一緒に食べることにしました。

　因みに、ウチワエビくんのお腹を見たら、こんな感じでした。↓↓↓
やっぱり、エビなんですね。 (笑)

　白菜を切らしていたので、冷蔵庫にあった小松菜や大根、
えのき、しいたけなどを用意し、
まだ動いているウチワエビたちを、それらの野菜とともに土鍋に入れ、
心の中で「ごめんね」と言いながら火をつけて煮ること 7-8分、
美味しそうなにおいが台所中に広がりました。

　火を止めて、土鍋を開けても、仲々ウチワエビに箸をつける勇気がなく (笑)、
最初のうちは野菜ばかりを取って食べていましたが、
そのうちに同居人が赤く染まった甲羅にハサミを入れて、身を取り出して食べ始めました。

　白くて美味しそう〜

　やっと私も食べてみようという気になり、
おそるおそるウチワエビを鍋から自分の器に取って、
尻尾を切り離すような形でハサミを入れたところ、
上下に分かれた双方に、白くて弾力のある身がぎっしりつまっていて
普通のエビとは比較にならない、食べ応えがありました。

　図体の割には身が多く、
伊勢海老より濃厚、と書かれている意味もわかりました。

　ただ、お味の方は伊勢海老より淡白で、
殻の色も薄いせいか、出汁の味も濃くはありませんでしたが、
上品なお味がして、なんとも幸せな気分になりました。

　そして、食べ終わると、下腹部を中心に、
カラダがほんのり温まってくるのを感じました。