ちょっと珍しい秋の海の味覚とは?
2021/11/10
急に晩秋らしい肌寒さとなった今日の夕食は、思いがけず、
ちょっと珍しい海の恵みをいただくことになりました。
それは・・・・
不思議な海洋生物
この写真、何だかわかりますか?
ウチワエビ、という海の生き物で、
セミエビ科(Scyllaridae)ウチワエビ属(Ibacinae)に属するエビの一種です。
千葉県から九州、日本海西部、沖縄、東シナ海、フィリピン諸島、
さらにはオーストラリア沿岸の水深100メートルほどの浅場に生息していますが、
泳ぐことができず、海底を歩いて移動するそうです。
甲羅が団扇(うちわ)の形に似ていることからウチワエビと名付けられましたが、
学名は bacuc ciliatus (von.Siebold,1824) といい、
これはドイツ人の医師であり博物学者でもある
シーボルト博士(1796〜1866年)の命名によるものです。
1824〜1828年まで長崎市出島に滞在した博士が、
自らオランダに持ち帰り、新種記載したそうです。
旬は秋で、甲殻類の中でももっとも身が詰まっており、
伊勢海老のように濃厚で美味しいとのことですが、
都会では珍しく、高価であり、
スーパーや普通の鮮魚店で見かけることはほとんどありません。
そんな貴重な海の幸を、今回、五島列島に住んでいる方が、
実家へ送ってくださいました。感謝!!
長崎県平戸市で水揚げされたもののようです。
ウチワエビのお味は?
火を止めて、土鍋を開けても、仲々ウチワエビに箸をつける勇気がなく (笑)、
最初のうちは野菜ばかりを取って食べていましたが、
そのうちに同居人が赤く染まった甲羅にハサミを入れて、身を取り出して食べ始めました。
白くて美味しそう〜
やっと私も食べてみようという気になり、
おそるおそるウチワエビを鍋から自分の器に取って、
尻尾を切り離すような形でハサミを入れたところ、
上下に分かれた双方に、白くて弾力のある身がぎっしりつまっていて
普通のエビとは比較にならない、食べ応えがありました。
図体の割には身が多く、
伊勢海老より濃厚、と書かれている意味もわかりました。
ただ、お味の方は伊勢海老より淡白で、
殻の色も薄いせいか、出汁の味も濃くはありませんでしたが、
上品なお味がして、なんとも幸せな気分になりました。
そして、食べ終わると、下腹部を中心に、
カラダがほんのり温まってくるのを感じました。
そもそも食材としてのエビには、いくつものすぐれた効果効能があります。
まず、エビの赤い色素は強い抗酸化作用を有するアスタキサンチンであり、
動脈硬化の予防や、視力低下を防ぐ効果があります。
殻には、肩こり、不眠、便秘を改善したり、
生活習慣病や老化の予防などの効果があるキチン・キトサンのほか、
タウリンやカルシウムも豊富に含まれています。
なので、鍋料理のように、殻ごと煮る調理法は、
殻の栄養成分も取れる栄養摂取の意味では効率的な調理法と言えます。
また、中医学的には温性を示し、カラダを温めるとともに、
腎の働きを高め、気の巡りを良くして、スタミナをつけます。
エネルギー不足である『氣虚』体質の人や、
胃腸の弱い人にもオススメの食材であり、
この季節の健康管理にもぴったりの食材と言えるわけです。
昔からエビは、自分の体質に合う食材とカラダが認識していましたが、
脾胃虚弱で疲れやすい人には強い味方であり、
朝晩の冷え込みが厳しくなってきたこの時候にも、
まさにうってつけの食材と言えます。
Good Timing で素晴らしい自然界の恵みが与えられた幸せに心より感謝し、
本格的な寒さに向かうこれからの季節、
カラダの声を聞きつつ、一層、健康に気をつけて過ごしていこうと考えた秋の夜でした。