松の内と鏡開き
2021/01/12
鏡餅の由来と鏡開き
お正月に、おせち料理やお屠蘇などの行事食を食べるというのも
日本人が大切にしてきた風習の一つです。
お雑煮も楽しみですね。
狭い日本で、その地方に特有のお雑煮があるというのも、興味深いものです。
日頃、体重が気になったりして、思う存分食べることができないお餅を、
罪悪感なく口にできるというのも、お正月ならではの開放感からでしょうか。
もち米をついて作るお餅は、
古来より稲の精霊が宿る神聖な食べものと見なされてきました。
松飾りが外に飾るものなら、家の中には鏡餅を飾って年神様をお祀りします。
鏡餅は、年神様の依り代(よりしろ)、つまり居場所であり、
魂の宿るところなので、床の間や神棚に飾るのがベストですが、
なければ、リビングなどでも問題ありません。
ただしその際は、年神様を見下ろすようなことはしないように、
少し高いところに飾るとよいでしょう。
鏡餅はなぜ丸い形なのか、なぜ大小の餅を飾るのか、等については諸説ありますが、
天皇家の「三種の神器」の一つである鏡の形に由来しているとされる説や、
「家族円満」や「世界平和」の願いが込められているとの解釈もあります。
また、大小のお餅は、陰と陽を表し、月と太陽の象徴という説もあります。
お正月の間、飾った鏡餅は、
「鏡開き」をして食べる風習がありますが、これもまた楽しみですよね。
鏡餅は、松飾り同様、松の内の間、飾っておくものですので、
松の内が開けてから「鏡開き」を行うことになります。
鏡開きは、1月11日とされますが、
松の内が地方により違うことから、別の日に行う地方もあるようです。
松の内が1月15日という地方では、
鏡開きを1月15日や20日に行ったりします。
鏡開きとは、鏡餅を下げて、
すなわち鏡を開くことにより年神様をお見送りし、
さらにそのお餅を食べることによって、
年神様の恩恵を体内に取込み、無病息災を願う儀式です。
なので、神様の依り代だった鏡餅を、
固くなったからといって刃物で切ってはいけません。
下げた鏡餅は、木槌等で叩いて割ります。
割ったあとは、食べやすいように手で細かくしましょう。
歯固めと言って、固くなった鏡餅を食べることにより、
丈夫な歯で長生きしようという意味もあります。
鏡餅は、飾ることにも意味がありますが、
食べることにも、また大きな意味があるのです。
ちなみに、お餅の正体であるもち米は、
中医学的には糯米(こうべい)といい、性味は甘、
温性すなわちカラダを温める作用をもち、脾、胃、肺に働きます。
効能としては、補中益気、健脾止瀉、補肺養陰、補胃陰など、
つまりカラダにエネルギーを与え、消化器を丈夫にし、
下痢を止め、肺を調える、等々です。
具体的には、
三焦渇利、自汗不止、脾虚泄瀉、虚労不足、消渇、尿多い、便固
などの症状を改善してくれる、ありがたい自然界の恵みなのです。
寒さにより、体力が低下したり、お腹の具合が良くなかったり、
風邪をひきやすかったり、便秘や頻尿にも悩まされがちなこの時節に
ぴったりの食べ物ということができそうですね。
お正月に、お雑煮や鏡開きによりお餅をいただくことは、
年神様のご利益を頂戴するとともに、健康管理にも一役買うという、
とてもありがたく、理にもかなった慣習のようです。
1月11日に鏡開きをし、
X 年前のその日に天に召された父の好物だったおぜんざいを作って、
日本人に生まれた幸せに感謝しつつ、父を偲びつつ、
家族でしっかり鏡餅をいただいた私なのでした。