ノーベル賞 week に思う -1
2020/10/12
学問の秋 ー ノーベル賞 week
先週から今週にかけて、
恒例のノーベル賞受賞者の発表が相次ぎました。
第一弾は 10/5 (月)、生理学・医学賞の発表でした。
高校の先輩でもある中村祐輔氏の受賞を期待していたので
少し残念でしたが、
C 型肝炎ウイルスを発見した米・英の3氏が
その栄誉に輝いたことについては、
ある意味、感慨深いものがありました。
私が、いわゆる輸血後肝炎に罹ったのは、
かれこれ 30年以上も前、
本来なら青春真っ只中のはずの10代後半のことでした。
その青春期に体調を崩して、
病院生活を余儀なくされた私でしたが、
やっと快癒に至って退院したのも束の間、
激しい倦怠感と全身の痒み、筋肉痛などに襲われ、
再入院となった結果、私の血液の中には、
ウイルス性肝炎を引き起こす2種のウイルス、
ー B 型肝炎ウイルスと、当時はまだその正体が未解明で
正式な名前さえなく非A非B型肝炎ウイルスとよばれていた
ウイルスー
の存在が認められたのでした。
1989年に「C 型肝炎」と名付けられ、
次第にその正体も明らかになっていった後者のウイルスは、
当時の医学では排除する術もなく、
無症状のまま多くが慢性肝炎へと移行し、
患者の体内でじわじわと増殖を続けた挙句、
20 - 30 年の間には肝硬変か肝臓ガンを引き起こし、
死に至らしめるという恐ろしいウイルスであることが
わかりました。
従来のウイルス性肝炎の治療薬も功を奏さないケースが
大半を占めることも明らかになりました。
つまり私は10代にして、
「不治の病」を宣告されたも同然だったのです。
それから私の「生きるための闘い」「西洋医学の常識への挑戦」が始まったわけですが、
その間にも、病院で知り合った患者さんはじめ、
同じ病の方々の悲しい知らせ(自死含む)を幾度となく
目に耳にし、時には絶望感に苛まれ、
心が折れそうになることもありました。
しかし、研究者たちの長くひたむきな尽力の結果、
近年、C 型肝炎治療薬の候補となる物質や、
従来のウイルス性肝炎治療薬の効果を劇的に向上させる
治療法が次々と発表され、
世界中で患者を対象とした臨床治験も、
相次いで実施されるようになっていました。
その結果、不治の病であったはずの C 型肝炎は、
従来の治療法のような重篤な苦痛を伴うこともなく、
飲み薬により、根治できる病になったのです。
B 型肝炎もC 型肝炎も感染症であり、
他人にうつす危険性を孕んだ病気です。
患者は、自身のカラダや命に対する不安だけでなく、
社会の偏見とも闘わなければなりません。
病気を正直に伝えた結果、
就職差別・結婚差別に遭ったという話も、
あちこちで耳にしました。
C 型肝炎ウイルスの発見は、
治療薬の開発につながったことは言うに及ばず、
その感染拡大防止や、肝硬変・肝臓ガンの原因解明にも
一石を投じた偉大な業績であり、
ノーベル賞の栄誉に輝くのは、
当然の結果であるといえるでしょう。
今回の受賞者のみならず、
世界中のC 型肝炎関係の研究者・医療者に対して、
元患者として、科学者の端くれとして、
感謝と尊敬の念を禁じ得ませんが、
C 型肝炎に限らず、難病と闘い続ける世界中の方々
およびそのご家族に対しては、
「いつか特効薬が開発されるかもしれないから、
絶対に諦めないで!!」
と、改めてエールを送りたい気持ちになりました。
写真;ノーベル賞財団提供(Science Portal より引用)