菖蒲華 (あやめはなさく)・・・【自然医科学研究所】
2022/06/28
6月21日は二十四節気の「夏至」の始まりでした。
太陽黄径は 90度、一年で最も正午の太陽の高さが高くなる日です。
昼間の時間、すなわち日の出から日の入りまでが最も長くなる日でもあり、
冬至と比べると、その差は東京や大阪で約5時間、北西の果ての根室ではなんと約6時間半にもなります。
夏至の期間としては 7月6日頃までとなり、蒸し暑い日々が続きます。
そして夏至の期間の”中旬”、6月26日〜30日は、
七十二候の第二十九候「菖蒲華 (あやめはなさく)」となります。
「菖蒲」は、アヤメともショウブとも読むことが出来ますが、
この時期に咲くのは、実はハナショウブです。・
アヤメ・ハナショウブ・カキツバタは、いずれも凛とした美しい花ですが、
姿かたちが似ていて見分けがつきにくいことから、
どちらも優れていて優劣がつけられず、選択に迷うことのたとえとして、
「いずれあやめか杜若(かきつばた)」との諺があります。
姿が似ているだけでなく、花をつける季節もほぼ同時期である3つの花ですが、
厳密には、5月上旬にまずアヤメから咲き始め、続いて5月中旬頃からはカキツバタ、
5月下旬から6月下旬になるとハナショウブが咲く・・と、少しずつずれています。
その ”トリ” を飾るショウブは、その根茎が生薬として用いられます。
石菖蒲(せきしょうぶ)と呼ばれることもあります。
開竅薬に分類され、心や胃に作用して、意識障害や健忘、耳鳴、難聴などに用いられたり、
胸腹が脹って苦しい時や、湿邪による気滞や疼痛にも効能があるほか、
熱毒による嘔吐に用いることもでき、まさにこのこの高温多湿の時期の不調に救世主となってくれます。
しかし、温性であるため、風寒湿痺証にも効果を示し、
打撲損傷や癰疽疥癬などの証にも適応があり、外用もできるという、
マルチプレーヤーのような頼もしい存在です。
愛でて美しいだけでなく、いざという時に私たちの健康を守ってくれる菖蒲に感謝しながら、
早くも梅雨明けしてギラギラ照りつける太陽を見ながら、夏の予定を考える私なのでした。