「食品衛生月間」(食中毒予防月間)です
2024/08/30
食中毒とは?
〜感染症の一種です〜
この数年間、「感染症」という言葉を聞かない日はありませんでしたね。
世界を震撼させた「感染症」は、病原性微生物によって引き起こされる疾患です。
感染症は、がんや糖尿病などのように、
自分のカラダの内部の状態が変化することにより発症する病、
言い換えれば、私たちが生活習慣等により自分で作り出してしまう病気とは違い、
病気の原因は外部に存在しており、隙を見て私たちを攻撃してきます。
そんな彼らは、私たち人類同様、地球上に生息する生き物です。
つまり、地球上で生きている限り、
「病原性微生物」と無縁の生活を送るのは難しいということにもなります。
感染症と生活習慣病の違いというか、感染症の特徴として、
「他人にうつす」危険性があることが挙げられます。
感染症が恐れられるのは、まさしくこのためであり、
1999年に今の感染症法が成立するまでは「伝染病」と呼ばれていました。
しかし、そんな感染症を未然に防ぐ手立てはあります。
感染源となる人混みを避けたり、手洗いやうがいを励行し、マスク等で防御するなどして
体内に病原体を侵入させないようにすることです。
また、「外敵」が体内に侵入したとしても、全ての人が発症するわけではありません。
日頃から免疫力を低下させないような生活習慣を心がけ、
感染しても発症しない体内環境を作ることにより可能となります。
これらは合わせて『感染防御の三原則』と呼ばれます。
1.感染源の除去 ...手洗い、正しい消毒など
2.感染経路の遮断 ...人混みを避ける、不織布マスク、使い捨て手袋の使用など
3.感受性対策(抵抗性の向上) ...食生活や睡眠の質の改善により免疫力 up
ところで、一時的なパンデミックとは違い、
毎年のように悲しいニュースが報じられる「食中毒」が
感染症だと認識している人はどのくらいいるでしょうか?
「食中毒」は、広義には、汚染されたモノが口から入ることにより発症するとされ、
必ずしも微生物由来とは限りませんが、一般的には、
飲食物に付着した微生物が原因となり、
それを食べた人に健康被害を及ぼすものと定義されています。
そもそも、「食べ物が腐る」すなわち「腐敗」という現象は、
微生物によって引き起こされるのです。
他方、健康食として「発酵食品」がブームになっていますが、
この「発酵」という現象も、微生物なくしては起こり得ないのです。
地球上で私たちと共存している数えきれない種類の微生物のうち、
私たちのカラダに害を及ぼすものによって引き起こされる現象が「腐敗」、
有益な微生物によって引き起こされる現象が「発酵」であり、
両者は紙一重であると言えるのです。
そして食中毒は、食べ物を介して、
私たちのカラダに害を及ぼす微生物を摂り混んだ結果、
健康被害が引き起こされるのですから、紛れもない「感染症」なのです。
感染症である食中毒は、微生物で汚染されたモノを直接食べた人のみならず、
その人の唾液や嘔吐物、排泄物等から、周囲の人に感染することもあり得ます。
そして、ニュース等でも報じられているように、命に関わることもあります。
自分が食品の衛生管理に十二分に注意することはもちろん、
上記『感染防御の三原則』を守って、被害を拡大しないようにすることも重要です。
ところで、日本では、食中毒の流行期が年に二度、訪れます。
6月から9月頃と、11月から2月頃という、真逆の季節です。
これは何故でしょうか???
感染症を引き起こす病原性微生物には、細菌、ウイルス、マイコプラズマ、真菌(カビ)、
原虫(寄生虫)など多くの種類があり、各々、性質を異にします。
食中毒に関しても然りで、細菌由来のもの、ウイルス由来のもの、
アニサキスなどの寄生虫によるものなど、様々です。
夏季に流行する食中毒は、主として細菌性のものとなります。
これは、細菌が、高温多湿の環境を好む(増殖が盛んになる)ことによります。
一方、冬季に流行する食中毒は、ウイルスを原因とするものが多いです。
ノロウイルス、ロタウイルスなどがその代表ですが、
細菌性の食中毒より感染性の強い場合が多く、現在は食中毒全体の中でも
ノロウイルスによるものが最も患者数が多くなっています。
家族にウイルス性食中毒患者が発生した場合は、タオルや食器を別にするなど、
”それを食べていない人” も感染防御対策をする必要があります。
また、サバなどの魚に多い寄生虫のアニサキスによる食中毒も、冬季に多くなります。
細菌とウイルスの生物学的性質の相違から、両者の間には、
予防法・対処法に多少の相違がありますが、
これについては、厚生労働省の『家庭での食中毒予防』を参考になさってください。
悲しい事故が起きないためにも・・
「食中毒予防週間」から「食品衛生週間」へ
「命に関わる感染症」である食中毒について周知し、
食品衛生思想の普及・啓発そして徹底を図るためには、
食品の安全性に関する情報提供 及び リスクコミュニケーションの推進が不可欠です。
そこで厚生労働省は1963年、8月の第1日曜日を含む1週間を「食中毒予防週間」と制定しました。
1977年にはこれを「食品衛生週間」と改称しましたが、
2003年からは期間を拡大して、8月の1ヶ月間を「食品衛生月間」と定めました。
2018年(平成30年)6月には、食品衛生法が15年ぶりに大幅に改正されましたが、
改正の主な理由としては、家族構成等の変化により家庭の食環境が変化していること、
食に起因する健康被害(食中毒)の下げ止まり状況、
海外の食品衛生状況との整合性などが挙げられます。
食中毒は、簡単かつ基本的な予防方法をきちんと守れば、防ぐことができます。
HACCPは最新の衛生管理の考え方ですが、家庭でも実行できます。
前述の 厚生労働省の『家庭での食中毒予防』にもありますが、
🔳 細菌による食中毒を予防するためには、
・ 細菌を食べ物に「つけない」
・ 食べ物に付着した細菌を「増やさない」
・ 食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」
という3つのことが原則となります。
🔳ウイルスによる食中毒を予防するためには、
・ ウイルスを調理場内に「持ち込まない」
・ 食べ物や調理器具にウイルスを「ひろげない」
・ 食べ物にウイルスを「つけない」
・ 付着してしまったウイルスを加熱して「やっつける」
という4つのことが原則となります。
🔳 アニサキス(寄生虫)による食中毒を予防するためには、
・ 食材を一度冷凍してから使う
ことが挙げられます。アニサキスは加熱でも死滅しませんが、
宿主である魚介類を一旦冷凍すると、解凍する際に細胞が破壊されます。
食中毒の予防には「きれい」「おいしい」ことよりも「清潔」「衛生的」であることが優先されます。
命位関わる感染症であることを忘れず、日常的に『感染防御の三原則』を習慣化することも大切です。
手洗いをはじめとする衛生管理の基本を見直し、感染症や食中毒を防ぎたいものです。